…真面目にゲームについて考えるコーナーです。つまらないかはともかく、 長くて堅っ苦しいので、暇な人だけ読んでください(>_<)。
ブロードバンド時代、と言われるようになってからしばらく経つ。 今やインターネットによる、体験版・デモムービーの配信は常識になっているようだ。 ブロードバンドであれば、高音質の主題歌・ボイス入りの体験版も容易に送受信でき、 これが企業にとって大きな宣伝効果となっている。 もちろん、僕らユーザーにとっても、発売(購入)前に本編に限りなく近い形でプレイできるので、 こういったサービスは非常にありがたい。
しかし、である。最近の体験版はいささか行き過ぎではないだろうか、 と僕は警鐘を鳴らしたい。確かに豪華で本編に近い体験版というのは、 メーカーにとってもユーザーにとっても、素晴らしいツールであると思う。 だが、最近のゲームはそれに振り回されすぎてはいないだろうか? 体験版からでっちあげたようなつくりになってはいないだろうか? 本来は「作品」であるはずのゲームだが、最近では「商品」の顔ばかりクローズアップされて、 僕としては、非常に萎えまくっているのが現状だ。
映画の世界、とりわけハリウッドでは「プロモーションビデオのために映画が作られる」 なんて皮肉が囁かれてからずいぶんと経っている。 TVドラマなどでも、コマーシャルで意味深に描かれていたのが何でもないシーン、 という心当たりはないだろうか? ゲームにおいても、やっぱり同じことが起きてるんじゃないかと思う。
どうも最近の作品に多いのが、ユーザーの望みに一つ一つ答えました、的なものである。 色々な性格・容姿のヒロインを乱立させ、それぞれのルートをつくり、 人気声優に声を当ててもらう。 これが、今の業界における「三点セット」なのではないだろうか。
掲示板で「ネコミミ萌え〜」とか皆で書いていれば、 メーカーのどなたかがそれをキャッチして、ゲームをでっちあげる。 皆が飛びつく。そして、皆ハッピー。それが(大げさな表現だが)今の現状だと思う。 これでは、作品から「熱血」は伝わってこない。 精子は出ても、涙なんて1mlもこぼれるはずがないだろう。
何でゲーム業界入ったのか? 何が本当は作りたいのか?
僕が見せて欲しいのは、その部分である。 もちろん「お兄ちゃんが12人の妹に囲まれて幸せ〜」なんて、 妄想そのものを見せられたいわけじゃない。 愛とか、魂とか、情熱とかそういう類のものだ(ボキャブラリーが貧困で申し訳ない)。 そのメラメラと真っ赤に燃える炎が見えたとき、 僕の欲望ではない、別のどこかが満たされる。僕がゲームに求めているのはそれである。
別に高尚なテーマ性、なんてものではない。 逆に、美少女ゲームでそんなものを見せられても、萎えるだけだ。 例えるなら、オナニーしているところにノックもせずに上がりこんできて、説教かまされるような。 どんなにありがたい話だろうと、耳には入って来ないだろう。 ここでいう「真っ赤な炎」っていうのは、単純に「おっぱいが好きだ!」とか 「妹じゃなきゃダメなんだ!」とか、本当にそんなくだらないものでいいと思う。 ただ「指が折れても作りきってやる!」っていうような情熱において、 ただの妄想とは一線どころか、十線を画するもの。 たとえ表面は大衆に迎合しても、芯の部分には、そういうものが存在して欲しい。
そこへいくと、この「体験版」というものが、 その芯の部分を腐らせているようにしか思えない部分が多々ある。
昔はそうではなかった。本当にゲームの序盤やOPだけを切り抜いたもの、 さらに音声をカットしたもの、そういったものが「体験版」として出されていた。 本編とは全く関係の無い、キャラとCGを流用しただけの話も多かった。 しかし、そこに見える演出の技術、CGの技術、テキスト・シナリオの技術、 そして作品の雰囲気を見て、ユーザーは購入を検討したものだ。 だから、それはそれで良かった。
ところが、ユーザーの方からは「もっと本編に近い体験版が欲しい」と、 また製作者の方からは「他のブランドよりも豪華な体験版で人気を得たい」と、 それぞれの思惑があった。 その結果が、現在のような音声バリバリの、プレイ期間の長い体験版というわけだ。 当然、これを作るのにはかなりの金がかかる。 必然的にメーカーは、早い段階からそうとうな借金を背負わなければならない(可能性が高い)。
すると、どうだろう?
本来、純粋にゲームを楽しみたいユーザーと、 本来、純粋にゲームを作りたい製作者がいるのにも関わらず、 まず体験版ありき、というシステムのせいで、もうけ主義にならざるを得ないのだ。 なぜなら、体験版を作って膨大な借金を背負い、しかもその借金はソフトが発売して、 売れなければペイできないからだ。 だから、体験版がゲームを殺す、どころの話ではない。 下手をすれば、体験版がメーカーを潰すし、体験版が製作者を殺しかねない。 それだけのお金が動いているし、それだけの手間も時間もかかっている。 学生やフリーターの規模なら、純粋にゲームだけ作っていれば、それでもいいかもしれない。 だが、会社としての規模で、社会人としての立場でそれだけのリスクを背負うには、 それなりのリターンが必要である。 それなりにもうけなければならない、宿命がある。 ただ面白いゲームをつくればいい、では済まされない、責任がある。
さらに付け加えて言うなれば、 豪華な体験版を製作スケジュールの早期に作ることで、 キャスティングやシナリオに融通が利かなくなる、という弊害も予想できる。
だから、体験版の一利のウラには百害あるんじゃないかと僕は思う。 そこで「もう少し昔に戻って、考えてみませんか? お互いに」というのが、 つまりここで言いたかったことである。 純粋にゲームを楽しみたいユーザーと、純粋にゲームを作りたい製作者がいるのにも関わらず、 その思いをないがしろにするようなシステムは、 なるべくならば、排除しておくべきであろう。
競争の社会、そんなことはどだい無理な話かもしれない。 でも、僕が支持しているエルフ、ライアーソフトに関して言えば、 実はそれほど豪華な体験版はつくっておらず(作品や発表時期にもよるが)、デモムービーもしくは、 昔ながらの音声なし、すぐに終わる簡素な体験版のみである。 だから、解っているブランドは解っているのかもしれない。少しでも可能性はある。 その可能性の輪が次々に広がっていき、純粋にゲームを楽しみたい人たちが、 純粋にゲームを楽しめる環境ができていくのを、僕は願っている。
もし、それが叶わないようであれば、僕はただそこを去り行くのみである。